今治建築WEB

建築家・伊東豊雄さんと大三島

Text & Photography|宮畑周平(瀬戸内編集デザイン研究所)

大三島にできた、ふたつのミュージアムを訪れる

島の風景にコントラストをあたえる
今治市伊東豊雄建築ミュージアム

ミュージアム遠景。輝く瀬戸内海と島々の連なりの中に幾何学のシルエットが浮かぶ。

島のちょうど真ん中あたりにある大山祇神社から車でおよそ15分。県道のいくつかのアップダウンを越えて、「ところミュージアム大三島」を少し行くと、美しい青色に輝く海を背景に、特徴的な幾何学のシルエットが見えてくる。伊東さんの建築思想や大三島での試みを広く伝えるためのミュージアム。篤志家の所敦夫氏が伊東さんに設計を依頼し、2011年に竣工。そのまま今治市に寄贈され、現在は今治市が運営を行っている。

まず目に飛び込んでくる、鉄板でできたいくつかの多面体で構成された建物が「スティールハット」。敷地内には、伊東さんがかつて住んでいた自邸を再現したアーカイブ棟「シルバーハット」も建っている。スティールハットがミュージアムの本館で、シルバーハットが別館のようなイメージだ。スティールハットのマッシブな「どっしりした塊」感にたいして、シルバーハットの「紙のような軽やかさ」が対照的で面白い。

奥にスティールハット、手前にシルバーハットが見える。県道は島の大事な生活道路で、みかんを満載した軽トラや、たまにトラクターなども走っているのが新鮮。

伊東さんはスティールハットの設計当初、景色を邪魔しないことを念頭に曲線的な外形を考えていたそうだが、最終的には彫刻的な今のプロポーションに落ち着いた。鉄板の外観は、造船王国・今治らしさを表している。そういえば、てっぺんの逆錐のかたちが、ちょうど船のマストにも見える。

屋上テラスから。鉄板でできた造形は、まさに巨大な船舶のよう。それが高台から海を見下ろして建っている。(屋上テラスは、現在立ち入り禁止)

エントランス。道路から少し下るアプローチを通って入館する。

エントランスホール。ここの受付でチケットを買って入館する。ちなみに「ところミュージアム大三島」と「今治市岩田健母と子のミュージアム」とのお得なセット券もある。

ROOM1。この日は大三島じゅうで伊東建築塾によって進められている11のプロジェクトが俯瞰的に紹介されていた。左にエントランスホール。中央奥の暗い部屋ROOM2では映像が流されている。右奥はROOM3。

ROOM2からROOM1を見る。内部も外部も垂直面がトイレの扉などをのぞいてひとつもないのが面白い。

サロン。ROOM3から階段で降りたところに設けられた大きな吹き抜け空間。2017年度展覧会では大三島島民の皆さんのポートレイトが壁面に飾られていた。

シルバーハットの外観。金属のカマボコ状屋根(ヴォールト)が連なっている面白い形状。内部は大部分が屋根をかけた屋外の「ワークショップスペース」で、これが東京の中心部に建っていたと想像するだけで楽しい。

屋外ワークショップスペース。建物面積の大部分を占める。オリジナルも「コート」と呼ばれており同様の半屋外だった。都会でも自然の空気を感じながら集うことを意識した伊東さんの設計を感じることができる。

図書閲覧スペース。伊東さんが手がけてきた数々の作品の図面・資料や模型なども見ることができる。

オリジナルでは子供部屋だった2階。家具デザイナー・大橋晃朗氏の手がけた家具が置かれている。円弧状の窓からは広い瀬戸内海を眺めることができる。

今治市伊東豊雄建築ミュージアム

[スティールハット]
設計 伊東豊雄建築設計事務所|構造 佐々木睦朗構造計画研究所|サインデザイン 廣村デザイン事務所|家具 イノウエインダストリィズ|施工 大成建設|敷地面積 6,295m²(ミュージアム全体)|建築面積 168.99m²|延床面積 194.92m²|階数 地上2階|構造 鉄骨造・一部鉄筋コンクリート造|竣工 2011年|建築用途 美術館|平面図断面図

[シルバーハット]
設計 伊東豊雄建築設計事務所|構造 O.R.S.事務所|サインデザイン 廣村デザイン事務所|家具 イノウエインダストリィズ|施工 大成建設|敷地面積 6,295m²(ミュージアム全体)|建築面積 168.32m²|延床面積 188.32m²|階数 地上2階|構造 鉄筋コンクリート造・一部鉄骨造|竣工 2011年|建築用途 美術館|平面図立面図・断面図

住所 〒794-1308 愛媛県今治市大三島町浦戸2418|TEL 0897-74-7220|FAX 0897-74-7225|メール info@tima-imabari.jp|開館時間 9:00-17:00|休館日 月曜日(祝日の場合は原則翌日振替)、年末(12/27-12/31)|サイト